翌日、プチ・シャンプラン通りへでかける。 フニクラというケーブルで崖の下のその通りへ降りると、通りは賑わっていた。とても短く狭い通りだが、天使(?)が歩いていたり、なかなか楽しい。 ぶらぶら歩き出すと、小さな広場があり、舞台を真ん中に人がたくさん座っている。お芝居か何かが始まるらしい。でも・・・この寒いのに、待つのなんかやだ! しかし、目の前のポスターを見ると、まさしく始まる時間だった。ちょっとだけ見て、適当なところで切り上げよう。 始まった寸劇は、総勢10名くらいで、みんなアラブ風の衣装を着ていた。これはいったい何?と思っていたら、進行役の男性からベツレヘムという言葉が聞こえて、ああ、キリストの生誕のお話なんだとすぐわかった。この進行役、ちょっとグランゴワール的(笑)。 その時、一つ、はっとしたことがあった。進行役が登場人物たちのことを「berges」と呼んだ。「羊飼い」という意味だが、この単語は予習していたノエル・ソングに頻繁に出てくる。
舞台上には妊婦姿のマリアと夫ジョゼフが登場、どうやらお役所へ何か(戸籍?)の登録をしにきているシーン、役人が書類を見て驚き、きまり悪そうにしている。きっと、イエスの父親がジョゼフじゃない、ということに対する素朴な(笑)反応を楽しく表現しているんだろう。 そしてやたら陽気な3人組登場。「ラクダに乗った3人の男」という表現だったが、すぐに「東方の三博士」だとわかった。マリアは無事キリストを出産、グランゴワールもとい進行役は「光の子供が生まれた!」と叫び、舞台は美しくクライマックスへ。 劇は30分ほどだったが、照明や演出もなかなかのものだった。
日本ではクリスマスは単なるイベントでしかない。形だけの文化が輸入されることは、ある意味当たり前だし、それを「間違ってる!」というつもりも毛頭ない。でも、少なくともケベックで、クリスマスの持つ本来の姿、聖夜というものの聖なる部分を私は感じた。そこには「祝う」心が自然体で存在する、と思う。そう、ちょうど日本人がお正月に対して感じるものと似ている(まあ、それも年々薄れているが)。 結局、その劇を立ったまま全部見た。よかった。ほんの少し、「クリスマス」に触れた気がした。 |
満足感いっぱいで歩き出すと、みやげもの屋があり、中に入る。 こまごまといっぱい買ったら、おじさんは「日本から来たの?」と尋ねた。小さな店内に他に客はおらず、そして私はここでもやっぱり「ブリュノ・クエスチョン」をした。 おじさんもやっぱりブリュノを知っていて、こないだテレビで見たよ、オルレアン島を自転車で走ってたよ(おお!きのう行ったところだ、オルレアン島!)、と言った。そして、「でも背はあまり高くないね、これくらい?女房が背伸びしながら見てたんだよ」と手でこれくらい、と指し示す。 「いえいえ、もっと高いですよ〜!(顔は笑っているが、ちょっと怒)」と、これくらい!と「もっと高い」度を強調して私もジェスチャー。見てきたとこだよ! とにかく、他にも何度か試みた「ブリュノ・クエスチョン」では100%のケベコワがブリュノを知っていた。さすがだ、ブリュノ! おじさんに、日本人はたくさん来ますか?と聞いたら、お得意様だよ、と笑って答えた。そして、おまけにケベック旗のシールをくれた。そこには「Je me souviens(私は忘れない)」と書かれていた。この言葉、ケベックの車のナンバープレートには必ず書かれている(チェック済み)。おじさんはそういうことを説明して、ケベックのことを覚えていてね、と言った。 当然ですとも!(笑) 店を出て、フニクラで再び上にあがる。そしてケベックの伝統的な料理を出すという「Aux anciens canadiens」に行く。 コース料理を頼んだから、アラカルトメニューよりは純粋に1人分だと思うのだが・・・なんで量がこんなに多いんだろう(泣)。シチューは野菜がたっぷりで、メープルシロップパイもおいしくて、喜んで食べた・・・が全部はとうてい無理。華奢で可憐なウェイトレスは「あなた、あまり食べないのね」とやさしく言ってくれたが、あなた、その細さでこれが全部食べられるの?!私、今日は朝も昼も食べてないのよ〜〜〜(旅行中ずっとお腹がいっぱいで、どんどん朝や昼を抜くようになっていた)。 最後にメープルシロップティー。メープルの味ではなく香りだけだが、おいしい。おみやげに買ってかえって、すっかりこの風味にはまる。 ケベック最後の夜が来た。だが意外に感傷的にはならなかった。 ありがとう、ケベック。ありがとう、ブリュノ。また来るよ、必ず。 まさかカナダでもう一泊するはめになろうとは、この時思いもしなかった。 [ページのトップに戻る] |
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Bruno Pelletier Japan --- White, Light, Holy Night 5